2018年8月、私たち一行は古めかしい白いトラックに乗り、ゴツゴツと石灰岩が転がる山道を走っていました。
ここは標高1400メートルの崖の上、窓からは美しい山々広がっています。気を抜くと頭を天井にぶつけそうになるくらいのガタガタな道を、期待に胸を膨らませながら揺られていました。
目指すのは、最盛期を迎えるブルーダルジャン農園一番の広さのラベンダー畑。
かつてラベンダー文化が繁栄していた中世では、多くの人が住んでいたアルジャン村。育てやすい品種改良種の台頭により、すっかり衰退した野生種の真正ラベンダー畑は、一人のパリジェンヌによって復興されました。
20ヘクタール、東京ドーム4個分程の山に大小約60のラベンダー畑が点在し、畑から畑までは車で大移動するのです。
ようやくたどり着いたその場所には、よく写真で目にする真紫のラベンダー畑とは程遠く、薄紫色のはかなげなラベンダーが一面に広がっていました。
一歩一歩乾いた白い土を踏みしめてラベンダー畑の真ん中に進むと、一瞬のうちに静寂の中へ引き込まれました。
ここにあるのは本物のラベンダーと太陽の光、自然の風、花から花へ飛び回るミツバチだけです。豊かな自然以外は何もありません。
「なんという贅沢な場所なんだろう….!」
しばらく畑の真ん中に寝転んで穏やかな風に吹かれていると、彼方から聞こえる農園オーナーヴェロニクさんの笑い声に、ふと我に返ったのでした。
あれから5年の月日が流れ、先日2022年収穫の真正ラベンダーがフランスからやって来ました。ドキドキしながら瓶の蓋を開けた瞬間、5年前に訪れたラベンダー畑の静寂が蘇りました。
あの時踏んだ大地の香りと静寂が、時間や海や空を超えて今繋がったような感覚でした。穏やかな風が心の奥深くまでしみ渡り、それでいて脳内は透き通った華やかさに包まれる、唯一無二の香り。
目まぐるしい変化の中で生きる皆さまの、ほっとするひと時のお供に。ぜひ体験していただけましたら嬉しいです。
南フランスの標高1400メートルの山岳地帯で、無農薬栽培される原種真正ラベンダー。
リラックスや安眠の他、神経の鎮静、抗菌、抗ストレス、筋肉の弛緩、更年期障害など、フランスでは古来から万能薬として使用されています。
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